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20の倍数がSSを書くスレ

760 :アオザイ論争:2005/12/01(木) 22:29 ID:ATZ6YkAg
「ベトナムって行ってみたいなぁ〜〜」
大阪がそんなことを言い出したのはテスト数日前、宿敵水原暦をギャフンと言わせんと猛勉強に励んでいる時だった。
「は?何なんだ突然」
「せやからベトナム行ってみたいねん」
先ほどブルースリーだかブルーファイブだかで止められた手がまたしても止められてしまう。
「まめちしきー  ベトナム行ったらなぁ、100円でご馳走が食べられるんやー」
「んなもんこっちだって肉まんくえるじゃん」
「ちゃうねん。もっとすごいご馳走やねん。おなか一杯食えるらしいで〜」
「生春巻きとかか?」
そういった神楽に対して、二人の視線が釘付けになる。
「あははははは」
「な、なんだよ!?」
「ばっかで〜 "春巻き"て言うんだから、生春巻きは中華料理に決まってるじゃん」
「そうやそうや」
二人に言われてみれば、確かにつじつまは合っている。
春巻きは中華料理なんだから、生春巻きも中華料理というのも納得できる。
「そうだったのかぁ。私今まで勘違いしてた。すごいなぁお前ら」
「へへーん、ことのともちゃんはなーんでも知ってるんだぞ」
智が自慢げに胸を叩く横で、大阪の頭の中にはちよちゃんのおさげが浮かんでいる。
それを生春巻きの皮で巻いてみると、それなりにおいしそうだ。
ということで口に運ぶと……

『なんやっちゅーねん』

不気味な声が脳内に響き渡るのと同時に大阪は首を振ってその想像を消し去った。
二人がどうしたのかと彼女を見たとき、彼女の頭の中にハッとあるベトナム料理が思い浮かんだ。
「ベトナム料理言うたら…… アオザイやなぁ」
「あ、それ私も聞いたことある。すっごく美味しいんだってね」
「私は名前くらいなら……」
しかし、ここで大問題が発生する。
「けど名前だけで食べたことなければ見たこともないねん」
「わたしもー」
「一体どんな形でどんな味なんだろ……」
三人とももう勉強などそっちのけである。
「う〜ん」と未知の食べ物『アオザイ』に対する想像力が膨らんでゆく。
「やっぱりさぁ、青いサイなんじゃない?」
「せやな。きっとそれや」
「それっぽいなー、でも…… どんな料理なんだ?」
智の意見に賛成した二人は、今度はどんな姿をしているのかという相談をし始めた。
「やっぱり、見た目が青いサイみたいな形なんやろうか」
大阪がノートに書いたのは……
お皿の上にサイが乗っていて湯気が立っているというまるで魚の姿煮のようなものだ。
無論パンダの時と同様に、絵心は榊に負けず劣らずである。
「いや、青いサイの肉使ってるんじゃないのか?」
神楽が考えたのはま野菜炒めのようなものである。
絵はそれなりに上手く、まぁ野菜炒めに見えなくも無い。
「ばっかでー、そんなの青いサイじゃなくてもいいじゃん。やっぱこれだろー?」
そうやって智が出したのは……

761 :アオザイ論争:2005/12/01(木) 22:29 ID:ATZ6YkAg
「おおー」
「ともちゃん絵上手いんやなぁ」
誰が見ても七輪の上に肉が乗っていると見える絵。
流石はちよの別荘に行くときに「お宅拝見!!」とかいう絵を描いただけのことはある。
「ほら、豚の肉とかさぁ『豚バラ』とか『豚タン』とか言うじゃん」
「あ」
「あー」
智に言われて納得してしまう二人。
「それじゃぁベトナムの焼肉屋に行ったら「アオザイタン一つくださーい」て言えばいいのか!」
「そうだ。そうできるようになれば私もベトナム通だな」
「あー、せやけど私焼肉弱いねん」
そうやってボンクラーズが雑談に沸いているところに……
「あ、勉強会ですか」
ボンクラーズ最大の宿敵とも言えるちよがやってきた。
「ちよちゃん、アオザイてどんな味なん?」
「へ?」
とんでもない質問に、ちよが思わず声を裏返らせてしまう。
「せやから、アオザイってどういう食感で舌触りで肌触りなん?」
ちょっと最後の質問がおかしい。
「……お、大阪さん?」
やっと状況が理解できたのだろう。
ダラ汗をかきながら説明を開始した。
「アオザイというのはベトナムの伝統衣装です。
 『長い着物』て意味で、上衣とズボンを組み合わせています。上衣には大きいスリットが入っているんですよ。
 体のラインをクッキリと見せるということで人気がありますね」
「あー、そうやったんかぁ」
ここでやっと三人は『アオザイ』の意味を知った。
「ラインをクッキリなぁ……」
自然に皆の視線が神楽の胸に集まる。
「な、なんだよ」
「ええなぁ、私もそんなんなりたいなぁ」
「!!!!」
包み隠さない単刀直入な表現に神楽の頬が赤く染まる。
「そういえば神楽の誕生日ていつだっけ?」
「再来週だけど?」
「よし、神楽クン。誕生日プレゼントにアオサイを送ろう。
 そんでその日着てもらおう。お前のスタイルならもうすげーことに」
「ちょちょっと待てよ、恥ずかしいだろ!」
「ええやん。胸大きいのええやん」
「…………」
本当に大阪は遠回りに表現するということを知らないらしい。
「それと、ベトナムの料理といったら生春巻きですよ」
「「へ!?」」
この指摘に智と大阪がすっとんきょうな声を上げた。
横で神楽は「何だ、私の方が正しかったんじゃん」という目でこちらを見ている。
「「…………」」
しばしの沈黙の後―――
「くそう、バカじゃないもん!ちょっと勘違いしてたんだからな〜〜〜!!」
「人間知らへんこととかあるんや〜、バカにしたらあかん!」
「生春巻き知ってたことをそんなにを自慢したいかー!!そんなんならなー、誕生日はケーキの代わりに生春巻き食ってればいいんだーい!」
「誕生日に贈りつけたるで〜〜〜!!」

数日後、智と大阪がデパートでアオザイと生春巻きを買っているのを見たという暦の証言が入るが、二人が否定しているので真相は定かではない。

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