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560 :『おせんべとチョコとソフトクリームの関係』:2004/05/05(水) 05:00 ID:???
「おせんべはな」
 あ、きたと神楽は思った。
 うららかな春の日のことである。
「人気者で、チョコも人気者」
 ほならやー、バレンタインに当たるのは、何の日? かくん、と首をかしげる愛らしい少女。もう今年で二十歳になる。
 高校時代の同級生で、今は休日を二人で過ごす中になった春日歩のぶっ飛んだ会話は、今となっては珍しいものではない。神楽は話題の中心になっている煎餅を齧って少し考えた。
 つまり愛しい人にチョコをあげる風習がバレンタインデーとするならば、おせんべをあげる風習があるとすればそれはいつかと彼女は尋ねたいのだ。
 あげる対象はどんな人なのか、シュチュえーションは、そんなことをしばらく考えて、神楽は応える。
「敬老の日」
「なるほど」
 ぽん、と手のひらを打つ、歩。
 そして陽だまりでお茶啜る音。
「あ、でもそれはおかしいな」
「なにが」
「お年よりは、歯が悪い」
 あー。
 神楽は素直に感心した。とたんに、ぶっ、と淑女らしからぬラッパの音。歩は黙ってからからと窓を開ける。さっと、春の風。
 そ知らぬ顔して、神楽。
「しゃぶって食うんじゃないか? そんでゆっくり噛み割る」
「なるほど」
 また、ぽん、と手を打って歩はお茶をまた一啜りし、ぶ、やて、と呟いた。その呟きを聞いて、神楽が笑いをかみ殺す。
 遠くから、物干し竿売りのテープの呼びかけ。戦争反対の街頭演説車のアジ。猫を呼ぶ子供の声。
「同じしゃぶるんならやー」
「ん? 」
「ソフトクリームのほうが良くないかなあ」
 あー。
 同意とも感心ともとれる曖昧な返事で神楽は応える。
 うつぶせていた身体をぐるんとひっくり返して神楽は、自宅の天井を眺める。波上の木目がうねっていた。

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