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物凄いSpeedで雑談するスレ 370

50 :伯爵 ◆xTfHc.nBiE :2004/03/23(火) 04:32 ID:???
 薄曇りの世界を、雨が色づけていた。 
 そのせいか、往来に人の姿があるのに、しんとしている。風景と音と雨が混ざり合って溶け合っている。
 さかちーは傘を斜めにして、空を見た。曖昧模糊とした世界。こんなのは嫌だ。
 清浄と、不浄の混ざり合ったこんな世界は。
 こんな格好、してこなきゃよかった。
 柄にもなくはしゃいで、何を着るのか一々悩んで。それもこれもみんなに気に入られたいから。これから会う人たちに、気に入られたいから。
 馬鹿みたいだ。
 そう思うのは、さかちーの目に映るセレモニーのせいだ。神前の結婚式。八幡宮の本殿を前にして、一組の男女の結婚式が行なわれている。
 新郎新婦の側を正面にして、左に果物、右に緑、正面に御神酒徳利と餅が置かれている。粛々と行なわれる儀式。あんな中に愛なんてあるんだろうか?
 その時何かが囁く。お前だって同じだろう? 普段ネットで話している相手と、実際にあって話すなんてわざわざする必要ないじゃないか。これはお前にとっての儀式じゃないのか……。
 違う違う。さかちーは頭を強く振る。さらり、と髪が頬を撫ぜた。
 目を反らすように振り替える。そこには本殿に続く長い長い階段。その前に立つ、Mizumaさん。
「堪能しましたか? お嬢さん」
「あ、またせちゃいましたか? 」
「いや、随分見入ってましたね」
 人のよさそうな八の字眉の下の優しい目がにこ、と微笑む。それはさかちーにすみませんと言わせない、優しい目。だからさかちーはこっくりとただうなづくにとどめた。自分の心を表すために。
「美少女をお待ちできるなんて、感激ですよ」
 音もなく降る雨の中、さかちーはMizumaに近寄った。
「お参り、してもいいですか? 」
「勿論」
 こくりとうなづき階段を二三歩行きかけて、今気づいたかのように、Mizumaは後ろを振り向いて尋ねた。
「何をお願いするんです? 」
 思わず目を反らす。顔が赤らむ。今回のオフがうまくいきますように。そう願うなんて、わざわざ口にするのは恥ずかしい。けれど、Mizumaはそんなさかちーを見透かしたように、僕もおんなじことをお祈りしたのです、と笑った。
 ああ、そうなんだ。ようやく救われたような気持ちになって、階段を上り始める。石段を雨がはじく、少女の靴がはじく。
 雨に似つかわしくない、たっぷりした白いスカートのすそに、跳ねた雨水がオセロのコマのように、ぽたぽたっと水玉模様を作った。
 まずは、明日のお天気を祈ろう。

みたいな感じ。

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