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ラウンジキャラたちが活躍するおはなし

158 :あず青労同大阪派教労委員会 ◆ttKIMURA :2004/01/06(火) 01:02 ID:???

 職員室は、来客やら何やらでしばしばうるさくなる。そんな時は教室で仕事をする。
 ある日もそうしていて、ふと顔を上げると、定刻に帰るつもりが日が暮れかかっている。
 私はあわてたが、さらに驚いたのは、いつの間にか教室の後ろの方に女生徒が一人、体
を机にもたれかけさせて立っている事だった。
「水原…君……?」
「…先生……」
 私は開口一番、下校時刻をとっくに過ぎている事を注意しようとしたが、途中で言葉を
のんでしまった。彼女の眼鏡の向こうの瞳が、異様なまでに熱く、それでいてどこか思い
詰めた様な、不思議な色をたたえていたからだ。
「私を、抱いて」
 水原君がこうつぶやくのと、私の首筋にしがみついて来るのとが、同時だった。
「??!!」
 男であるなら、きっと私でなくとも混乱するだろう。そうだ、あの目つきは「女」とし
ての彼女の目つきだったのか、と気づいたが、時すでに遅しだ。



 驚くべきハプニング。そして、それと裏腹な、彼女の、まるで何年も連れ添った相手に
ささやく様な落ち着いた物言い。穏やかな口調ながら、組み敷かれる様な圧倒を感じるの
は、水原君の、少し低い大人びた声のせいだけではあるまい。
 何たる事だ。自分の半分ぐらいの年齢の生徒に圧倒され、離れることができない。軽い
陶酔が、私の理性をどこかに追いやろうとする。
「……君には…滝野君が……いるじゃない…か」
 私は、彼女のうなじから立ちこめてくる甘い香りにむせびながら、こう切り返すのがや
っとだった。だが、水原君は語気を強めて言った。
「…ともはいろんな相手と…その、冒険してるのに、なんで私だけとも一筋だって決めつ
けられるの?!先生も…そうなの?」
 不意に彼女の声に、今にも嗚咽に変わりそうな震えが混じった。
(そうか、そういう見られ方はつらいよな……)
 私は教師としての自分を取り戻しかけたが、しかし、この弱々しさがまたいい。先ほど
の大胆さとの落差が、前に増して私の中枢を刺激する…。
「……わかった」
 もう、限界だ。

159 :あず青労同大阪派教労委員会 ◆ttKIMURA :2004/01/06(火) 01:03 ID:???


 だが、私が抱き返そうとした刹那、やおら水原君が私から離れ、机の前に戻った。
「…お金はどうします、先生」
「……え?!」
 何だって…。
 水原君は、先ほどの様に挑発する様な輝きを目に浮かべつつ、後ろ手と腰とを机にのせ、
高いところから見おろす様な顔つきでこちらを斜に見る。だいだい色の西日が、彼女のす
っかり大人びた体の線と、同じく大人びながらなお少女の面影を残す顔とを、さらに引き
立たせている。
「…したいんでしょ。いくら出すの」



 何と言うことだ。しかも、一連の行いを振り返ると、えらく手慣れているではないか。
 私は、娼婦は嫌いだ。
 それでなくとも、私は教師で、彼女は生徒だ。
「君は一体何をやっているんだ!!」
私はそう叫んで彼女の横っ面を張り、


 ……となればかっこいいのだが、私も男だ。
 この水原君の姿態は、娼婦のそれとも違う。サディストの女に見下されている様でいて、
純情な小娘に迫られている様にも感じてしまう。その混じり合いが、私を突き上げる。
(何度となくこういう事を繰り返しているだろう。だが、彼女の何かがこういう形を取ら
せているだけで、満たしたいのは、金じゃない何かなんだ……)
 私は、背広から財布を取り出し、水原君が座る脇に置いた。向こう一週間ほどの生活費
をおろしてきたところだから、相応の金額はあるはずだ。

160 :あず青労同大阪派教労委員会 ◆ttKIMURA :2004/01/06(火) 01:03 ID:???


 宿直室の鍵を、水原君は手に入れていた。宿直はもう大昔の話で、ここなら安心だ。
 水原君を抱きしめてそのまま畳の上に崩れ、顔を近づけると、彼女は眼差しを緩めた。
頬が少し紅い。
 「…来て……」
 やはり、彼女は手慣れた娼婦などではなかった。 
 かわいらしいと同時に、大人の様な色っぽさが全身から薫っている。彼女の体を指して
眼鏡デブなどという陰口を叩く者があるようだが、それはその人間が幼稚である証拠だ。

 自分の心臓が、飛び出しそうなぐらい高鳴っている。めまいがするほど興奮している。
(い、いやらしい事が目当てでするんじゃないぞ……水原君という一人の生徒に人間の本
当の暖かさを、身を以て、お、お、教えるんだ!)
 制服ごしに見るだけでくらくらする様な、豊かな腰回りや胸のふくらみを眺めつつ、私
は水原君に覆い被さった。
 私の目の前で真っ赤に息づいている、少し丸みを帯びた頬………



 ………ん? 少し、と書いたが、ずいぶん丸くないか??
 今まで眼鏡が光っていてよく見えなかったが、何か少し目の感じが違う様な気がする。
 私の友人に、長い髪を売りにして掲示板で「だーりん」とか言っている男がいたが、そ
の男の目に似ている様な………
 と、その『少し違う』瞳に急に不敵な笑みを浮かべて、『水原君』がつぶやいた。
「1レ、発車!」
私は思わず答えた。
「承知!」

 ここに至って『水原君も鉄だったのか!よし鉄研創設だ!』などと考えるほど、私はお
めでたくない。
 『水原君』の顔の端に見つけたほつれの様なものを引っ張ると、顔がぺりぺりとむけた。


 そこで、目が醒めた。
 妻の顔を見るのが、少し恥ずかしかった。

                              【完】

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