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|∀・) コソーリ

800 :楊痣 ◆5KxPTaKino :2003/11/12(水) 22:38 ID:???
 跨るバイクのバックミラーに、人影。車庫内に人がいるとは思っていなかった乾は、驚いて振り向いた。
 眼が隠れるほど目深にかぶった野球帽、その両脇から垂れる髪、上下黒のぶかぶかの衣服。
【四葉(ラッキー・クローバー)】のひとり、【蜘蛛】の澤田――。それが、彼の名だった。
「おまえっ……」
 乾は、かぶりかけていたヘルメットを脱ぎ、近づいてくる人影に呼びかけた。
「澤田……来てたのか」
 つい先ほど、【四葉】の溜まり場であるバーの主【海老】の景山――彼女も【四葉】の一員である――に、
四人纏めてかかってこいとの宣戦布告をしてきたばかりだ。 
 居合わせた澤田は、そのまま店を出た乾のあとをつけて車庫まで来たのだろう。
 そして、乾の前でぴたりと足を止めた。
「――真理は」
 澤田が細い声で呟く。その声は暗い車庫の壁に小さくこだました。
「真理は、オルフェノクである君を、真理をおそった俺と同じオルフェノクである君を、信じようとしている……」
 折れた野球帽の鍔の下から澤田の瞳がちらりとのぞいた。その目に、敵意は感じられない。
「何故だ! ……何故なんだ!」
 澤田は、悲痛な叫びとともに乾の両肩に手をかけた。
 人としての心を失った魔物――それが、オルフェノク。
 人々をおそい、つぎつぎと灰に変えていく恐怖の存在――それが、オルフェノク。
 真理は、昔の同級生であることだけを理由に、オルフェノクとなった澤田を信じようとし――
そして、一度は命を失った。その真理が、今また、オルフェノクである乾を信じようとしている。
答えが欲しかった。何故、真理は、信じようとするのか。何故、裏切られても信じるのか。

 乾にも答えがわかる筈はない。
 澤田の両手は虚しく彼の体を揺さぶった。
 その手から、灰がこぼれる――
「!!」
 澤田は、乾の肩から手を離し、灰となって崩れつつある自分の右腕をおさえた。
 苦痛のうめき声をあげながら、床にうずくまる。 
「なっ! ……お前……」
「――どうやら限界が来たようだ……所詮、俺も、失敗作だったということか」
 いぶかる乾に背中を向けたまま、澤田は苦しげに呟いた。


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